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今日一日を大切に生きる。病気の保護犬が教えてくれたこと


庭で黒柴と過ごす
【はなこ × めしうま】

◆静かにくんくん匂いを嗅ぎにくる、その顔にイチコロになった。


「もともと、犬を飼うために家を建てたんですよ」

犬がのびのびできる広い庭と開放的なリビングは、かつての飼い犬への「もっとこうしてあげたらよかった」を実現したものだ。

「昔、実家で柴犬を飼っていたんですけど、庭がなかったり、遊ぶ時間がなかったり、死んだときにすごく後悔が残って」

そうした後悔もあり、保護犬を引き取って幸せにしたかった。出会ったとき、「めしうま」はすでに2~3歳の成犬。増えすぎて崩壊した繁殖場から保護施設へ引き取られた犬だった。くんくんと静かに匂いを嗅ぎにくる顔にイチコロになった。


リビングでこちらを見つめる黒柴


◆命に関わる病気。1日1日を大切に過ごさせてあげたい。


迷いもあった。めしうまは、放置すれば死に至ることもある「フィラリア症」に感染していた。

「命にかかわる病気なので、長く生きないかもしれないし、他の犬と遊ぶときにも印象が良くないし、周りから反対されたりもして」


リビングで黒柴と一緒に過ごす

悩んだ末に獣医に相談。獣医師はこう言った。

「その子にとっての一番の幸せは、里親さんが決まって、早く治療を始めてあげること。一緒に治療していきましょう」。その言葉に迷いは晴れた。

「自分の心配ばかりしていたけど、この子にとっての幸せは何だろうと考えが切り変わりました。長く一緒にいたいということではなく、1日1日を大切に過ごさせてあげようと思うようになって、あまり心配がなくなったというか」


愛犬の黒柴にキスする
リビングで黒柴と遊ぶ


◆慣れるまで散歩しなかっためしうまに、ホメホメ作戦。


めしうまの散歩は朝と夕方の2回。今は元気に散歩するめしうまだが、家に来たばかりのときは、散歩に出かけても数メートルで動かなくなってしまうことが続いた。

「色んな犬の中で大きくなった子なので、犬社会のマナーがわかっていて、トラブルが少ないし飼いやすいよ、と言われていたのですが、慣れるまでには時間がかかりました。最初はリビングにもなかなか入ってこなくて」


住宅街を黒柴と散歩
黒柴と歩く狭い散歩道

しかし、夫の真也さんが散歩するときにはめしうまは歩くのだという。あるとき、真也さんが連れて行く散歩を後ろからつけて観察することにした。

「めしちゃんが散歩の途中に座り込んだら、夫は背中をさすりながら『めしちゃん行くで。歩くで』とか言って、励ましていた。それで、私は励ましを超えた『ホメホメ散歩』に変えたんです」

「あ、すごい。めしちゃん歩いてくれて嬉しいな。めしちゃんと散歩できてうれしいな」

一歩でも歩いたら、ひたすら褒め続けた。すると、1回も止まらずに歩いためしうま。その日からは普通に歩くようになり、今では散歩が大好きだ。


黒柴との散歩道。花壇の前でおやつタイム
黒柴との散歩道。犬の交流


◆夫婦の喧嘩が減って、近所付き合いが増えた。


めしうまとの暮らしを続ける中で、いろいろな変化があった。そのひとつが夫婦喧嘩。以前は月一の頻度でしていたが、めしうまが来てからは全くしなくなった。

「めしちゃんが散歩で歩かなったり、病気が心配だったりで、私はすごくストレスだったんですけど、夫は平気で、『だって可愛いやん、全然気にならんで』。という感じでした。それまで単純な人やなと思っていたのですが、その単純な性格が尊敬できるようになりました」

近所付き合いも増えた。散歩に出かけると、犬を飼っている者同士、会話が弾んだ。今では、近所の人から野菜をもらうことも。

「犬を飼っている人は若い人も年配の人も幅広い層がいるので、いろんな年齢層の人と仲良くなれちゃうという。犬ってすごいなと」


ウッドデッキで黒柴をブラッシング
ご飯の準備を見つめる黒柴


◆今日1日を大切に生きる。めしうまが教えてくれたこと。


毎日言い続けているおまじないがある。

「今日も明日も明後日も、めしちゃんが健康で幸せに過ごしてくれました。感謝します」

ブラッシングしながら、お腹を撫でながら、1日くらい忘れても大丈夫なように、明日と明後日の分も言っておく。その甲斐あってか、めしうまのフィラリア症は完治した。


黒柴との散歩道。坂道でダッシュ

命に関わる病気の心配はなくなったが、「1日1日を大切に」という姿勢に変わりはない。

「犬は長生きとか考えずに、1日1日を生きている。犬と過ごしていると、あと何年生きるかという感覚ではなくて、今日1日大切に生きようという感覚になれるんです」


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